高校時代、監督さんに口をすっぱくして言われたものだ
「先頭打者は出すな」と・・・

〜前 説〜
私は高校時代ピッチャーをやっていました。当時監督さんに口をすっぱくして言われていたのが、「先頭打者は絶対に出塁させるな!こらー・・・」(教育者とは思えない罵詈雑言・差別用語が続くので割愛しました)ということ。特に、「フォアボールでの出塁は絶対いかん!」と厳命されていました。先頭打者をフォアボールで出した時など、ベンチにいる監督さんの顔は鬼の形相となっており、3アウトをとりイニングが終了しても、ベンチに帰ることが恐かったことをよく憶えています。確かに自チームのピッチャーが先頭打者をフォアボールで出塁させると、バックは「嫌な予感がする」とか「守りのリズムが狂う」などの理由で嫌なものです。私もピッチャーをやらない時はセンターを守っていたので、野手の気持ちも理解できるのです。私の現役当時の経験談を語ってもイマイチ説得力がないので、先頭打者を出塁させた場合、どれぐらいの確率で得点(攻撃側からすれば「得点」、守備側からすれば「失点」)されるのかを「フォアボール」・「ヒット」・「エラー」など出塁ケースごとに検証してみたいと思います。
※この他にも得点に関するちょっとした検証もしてみました。

 

 
投攻守において高レベルのチームが出場していると思われる選抜大会33試合と選手権大会48試合の計81試合を検証データとしました。

  • 平均スコアと先攻・後攻の勝率について
  • イニング及び序盤・中盤・終盤と得点の関係について
  • 先頭打者の出塁と得点の関係について
  • 81試合を試合毎に検証

 

 
選抜と選手権の平均スコアを比較すると、敗戦校の得点は選抜2.6と選手権2.5とほぼ同じであるのに対して、勝利校の得点が選抜5.9に対して選手権7.4と、夏の選手権の方が大きい。春に比べると出場校の打撃力が向上していることが要因でしょうか。
先攻・後攻チームの勝敗については、選抜と選手権は対照的な結果となっています。選抜は後攻チーム(0.545)先攻チーム(0.455)を勝率で上回っているのに対し、選手権の方は先攻チーム(0.667)後攻チーム(0.333)を大きく上回っています。先攻・後攻は対戦チームキャプテンのジャンケンによって決定されるものなので、この結果を単に偶然的なものとして捉えてよいのか判断に迷うところです。

 

大会名 試合数 勝利校
得点
敗戦校
得点
平均
スコア
先攻校
勝利数
先攻校
勝率
後攻校
勝利数
後攻校
勝率
選抜大会 33 196 85 5.9-2.6 15 0.455 18 0.545
選手権大会 48 355 118 7.4-2.5 32 0.667 16 0.333
トータル 81 551 203 6.8-2.5 47 0.580 34 0.420

 

イニング及び試合の序盤・中盤・終盤のどの局面に得点が多いのかを算出してみました。その結果や如何に。

 

先頭打者出塁の有無と得点の関係を一覧表にしてみました。
●一覧表の見方及び用語説明
  • 回数
    先頭打者がアウトになった回数とヒット・フォアボール・エラーで出塁した回数
  • 得点回数
    得点が入った回数
  • 得点率
    得点回数÷回数で算出された数値
  • 得点数
    先頭打者状況別の総得点数
  • 平均得点
    得点数÷得点回数で算出された数値
  • 出塁総計
    ヒット・フォアボール・エラーの各項目の数値を合計した数値

●検証結果
先頭打者が出塁した場合の得点率は0.504アウトになった場合の得点率は0.169。まさに一目瞭然。先頭打者が出塁した方が出塁しなかった場合に比べて、得点が入る確率は約3倍高いようです。ノーアウトからランナーが出た場合は、作戦面で多くの選択肢がある為、得点の確率が高くなるのは当然ですね。出塁ケース別にみた時、ヒットで出塁した場合の得点率0.541が一番高く、次にエラー0.462、最後にフォアボール0.420という順。監督さんや野手は、ピッチャーがフォアーボールで出塁させるのを極度に嫌いますが、得点される確率からいけば、エラーよりも低いようです。この辺は投手心理が多分に影響しているのかもしれないですね。ピッチャーサイドからすれば、打ち取ったと思った打球をエラーされるとガクッときますから。
平均得点に関しては、先頭打者の出塁の有無あるいは出塁のどのケースもほとんど同じで2点弱。先頭打者がヒットで出塁したからといって、ビッグイニングになる確率が高いというわけではないようです。平均という手法によって算出された数値なので、参考程度にとどめておいた方がよいと思われます。

■一覧表■

先頭打者 回数 得点回数 得点率 得点数 平均得点
アウト 901 152 0.169 285 1.9
出塁総計 542 273 0.504 469 1.7
ヒット 366 198 0.541 330 1.7
フォアボール 150 63 0.420 119 1.9
エラー 26 12 0.462 20 1.7

 

選抜大会と選手権大会全81試合を試合毎に、先頭打者出塁の有無と得点の関係を比較表にしてみました。先頭打者の出塁の有無は勝敗にどういう影響を与えているのでしょうか。

●検証項目とその意味

  • 先頭打者がアウトとなった場合つまりワンアウト・ランナーなしから、どれくらいの確率で得点しているのかが分かります。
  • 先頭打者が出塁した場合、どれくらいの確率で得点しているのかが分かります。
  • 先頭打者がヒット・フォアボール・エラーなどどういうケースで出塁した場合、どれぐらいの確率で得点しているのかが分かります。
  • 対戦校のデータを比較することによって、勝敗の要因を多少なりとも推察することができます。

●比較表の見方及び用語説明
桐光学園のデータを例に説明します。

  • アウト
    試合中先頭打者がアウトになったのは6回(回数6)であり、その6回のうち得点を入れた回数が2回(得点回数2)で、その得点の合計が2(得点数2)であった。
  • ヒット
    試合中先頭打者がヒットで出塁したのは2回(回数2)であり、その2回のうち得点を入れた回数が1回(得点回数1)で、その得点の合計が1(得点数1)であった。
    ※フォアボール・エラーの項目も同様。
  • 出塁総計
    ヒット・フォアボール・エラーの各項目の数値を合計した数値です。
    試合中先頭打者が出塁したのは3回(回数3)であり、その3回のうち得点を入れた回数が1回(得点回数1)で、その得点の合計が1(得点数1)であった。

●比較表ページ
試合毎の比較表を作成しましたので、ご覧になってください。いろんなケースがあってなかなか面白いですよ。

  • 選抜大会編1234567
  • 選手権大会編12345678910

■比較表例■

宜野座高 4−3 桐光学園

回数 得点回数 得点数 先頭打者 回数 得点回数 得点数
5 1 2 アウト 6 2 2
4 2 2 出塁総計 3 1 1
4 2 2 ヒット 2 1 1
0 0 0 フォアボール 0 0 0
0 0 0 エラー 1 0 0

 

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