高校野球の見方は十人十色です!
第38編
四国地区の夏季大会を振り返って−2003.08.04 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
梅雨の最中行われた四国地区の夏季大会ですが、県毎に大会を振り返ってみたいと思います。 ■高知県 明徳義塾・高知高校・高知商業・岡豊高校のシード4校が揃って準決勝に進出し、結局優勝したのは大本命の明徳。今年もまた波乱のない大会となってしまいました。これで、明徳は5季連続、夏に限ってみれば6年連続の甲子園出場を達成したわけです。この1強状態が健全か否かについては議論の分かれるところではありますが、他校の頑張りに期待するしかないですね。私が高知の高校野球で懸念しているのは、明徳の1強状態が高校野球の空洞化を招かないかということ。経済の場合、一企業による市場独占が長く続くと、競争力が働かず、結局は業界全体が停滞・低迷していく傾向があります。一部には、「明徳の常勝化によって、高知高校野球のレベルが底上げされている」と肯定的に論じられている方もいらっしゃいますが、野球に限らず、世の事象はそんな甘い展開はないような気がします。辛気臭い話はここまでにして、最近私が注目しているのが中芸高校。地味ではありますが、近年実績を徐々に残しており、いつかブレークするのでは。 ■香川県 抽選前は秋春を制した三本松高が夏も制して、県大会完全制覇なるかどうかに注目が集まった大会でしたが、抽選結果はというと、三本松にとっては試練の組み合わせとなりました。初戦の相手は、香川高校野球界の盟主・尽誠学園。同じゾーンには、丸亀高校や高松商業など強豪ぞろい。注目の対戦は、勝敗は抜きにして、尽誠が三本松を大差で下すという誰もが予想できない結末。この波乱が呼び水となったのか、香川大会は波乱続き。三本松に勝った尽誠は丸亀に敗れ、尽誠に勝った丸亀は高松商に敗れ、丸亀に勝った高商は高松南に敗れ、高商に勝った高松南は決勝で香川西に敗れるという、三本松を起点とした『敗戦のドミノ倒し』のような大会となってしまいました。第三者的立場にある高校野球ファンにとっては、まさに筋書きのないドラマが展開されたわけで、面白い大会だったようです。優勝した香川西高は全国的には無名ではあるものの、香川では尽誠に次ぐ私立の強豪校。今回の甲子園出場が同校にとって今後の躍進のきっかけとなるのかどうか、非常に興味深いところです。 ■愛媛県 近年の夏季大会では第一シードの敗退が相次いでいた愛媛大会ですが、今年は第一シードの大本命である今治西高が圧倒的な強さで優勝し、なんと22年ぶりの甲子園出場を決めました。今西は春の選抜には近年何度も出場しているものの、夏の大会では思いもよらぬ敗戦を喫して、甲子園出場を逃し続けていただけに、関係者の方は感慨無量なのでは。それにしても、今年の今西は強かったですね。春の四国大会を制したことでも分かるように、投打の戦力の充実ぶりは愛媛では群を抜いていました。私は、「今西の悪癖である『綺麗な野球』をしようとしなければ、優勝できない方がおかしいだろう」と思っていたぐらい。秋の大会ではこの悪癖が出て、県大会では今治東高に準決勝でまさかの敗退、四国大会では鳴門工業にも悪夢の逆転負けを喫して、選抜を逃したという苦い経験をしました。この反省が糧となったのか、今西には珍しく、夏は泥臭い野球をしていましたね。打撃は全国でもトップレベルにあり、投手陣も整備されているので、愛媛県勢3年連続ベスト4も夢ではないような気がします。但し、泥臭い野球に徹すればのことですが・・・。余談ですが、今西野球部を『文武両道』と評しているマスコミが多いですが、「今現在の野球部は、『文武分業』が実態なのだ」と、あるOBの方が吐露していました。うまいこと言いますね。 ■徳島県 小松島高が、選抜大会にも出場し上位に進出した徳島商業と鳴門工業を撃破して優勝。第三シードの優勝なので、厳密には波乱とは言えないものの、この結果に驚いた人も多いのでは。徳商と鳴工の戦力と実績が群を抜いていただけに、波乱と評してもいいような気がします。徳商と鳴工の力の野球に対して、小松島の技の野球。技の野球が力の野球をどういう風に制したのでしょうか。徳商や鳴工でなくても、徳島勢が甲子園でも勝てるということを小松島が実証してくれるのか、大いに注目しています。 |
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中国地区の夏季大会を振り返って−2003.08.04 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
雨に祟られた中国地区の夏季大会ですが、県毎に大会を振り返ってみたいと思います。 ■山口県 決勝戦は、岩国高校と宇部鴻城の第一シード同士の対戦。宇部鴻城は、あと二つアウトをとれば甲子園出場というところまで岩国を追い詰めたものの、直後同点ホームランを喫し、延長12回に決勝点を奪われて敗退。悔やんでも悔やみきれない敗戦を喫してしまいました。それにしても、岩国は相変わらずしぶといですね。準決勝も8回終了時点で1−3の劣勢を、9回表一挙に3点を入れて逆転勝ち。実戦経験に裏打ちされた実力と強い精神力の賜物なのでしょう。今年のチームの主力は1年生時からのレギュラーで、天国と地獄をともに経験しています。一昨年の夏季大会は、1回戦で柳井高校に屈辱的なコールド負け。昨年は、決勝で宇部商業に大敗。そして、今年はミラクルな逆転劇でついに頂点を極めました。「岩国高校では甲子園で勝てない」と陰口を叩いている人も多いですが、私は「甲子園に出場するだけでも立派。甲子園は楽しむ場所」と思っているので、甲子園初勝利を意識することなく、ノビノビとプレーしてきて下さい。余談ですが、岩国高校の監督である河口さんの濃いキャラは、山口ではかなり有名。甲子園大会の中継の時は、彼のベンチ内での一挙手一投足と怒声をチェックしてみるのも一興だと思います。風貌は、『田中邦衛さんを縦に1.5倍、横に2.0倍』したような感じの人です。 ■島根県 私が島根大会で注目していたのは、春季大会ベスト4の飯南高校と選抜大会に21世紀枠で出場した隠岐高校の動向。飯南は3回戦で江の川高に敗退、隠岐は奇しくもその江の川に決勝で敗退。隠岐は選抜では屈辱的大敗を喫し、春季大会では初戦敗退するなど、夏に向けてチームを立て直すのは大変だったと思いますが、意地で決勝戦まで勝ち進んだような感じ。気持ちとしては、夏の甲子園でリベンジさせてやりたい気もしましたけど、勝負ですからこればかりは如何ともし難いですね。今度は21世紀枠というタナボタ的なものではなく、正真正銘の実力で甲子園出場を掴み取って欲しいと思います。一方、優勝した江の川は8年ぶりの夏の甲子園出場を決めました。この間、選抜にも出場していないので、本当に久しぶりの出場。かつては島根高校野球界の盟主の座にあった江の川も、ここ数年は伝統校・浜田高校や新興私立・開星高校に押され気味で、『眠れる獅子』状態にあっただけに、今回の出場を機に完全に目を覚ますのか、今後に注目したいと思っています。 ■鳥取県 秋春の県大会を制し県大会完全制覇を狙った第一シードの境高校は準々決勝で倉吉北高に、シード校で甲子園初出場を目指した第二シードの由良育英は初戦の2回戦で鳥取城北に苦杯を喫するなど、序盤から波乱続きの大会。実力が拮抗しており出場校数が少ない鳥取大会だけに、組み合わせによっては、シード校初戦敗退もありうるのが鳥取大会の特徴なんでしょうね。混戦の鳥取大会を制したのは、シード校の八頭高校。これで、2年連続の夏の甲子園出場。ここ10年で5回の出場ですから、大したもの。山口の岩国高校と同様、八頭高校は甲子園では芳しい成績を上げていないので、「八頭高校ではダメだ」とほざいている人を掲示板等でみかけますが、こんな口だけ評論家の陰口など気にすることなく、頑張ってもらいたいものです。 ■岡山県 公立私立の強豪が犇く混戦の岡山大会を制したのは、倉敷工業。Aシード、Bシード校の敗退が相次ぐ中、激戦を制して勝ち上がってきたのは、Aシードの倉敷工業とノーシードの倉敷高校。決勝戦は雨中の決戦となり、倉工が終盤逆転して乱戦を制し、7年ぶりの甲子園出場を決めました。近年、私立の関西高校と岡山理大、公立の岡山城東と玉野光南の活躍で、影がめっきり薄くなっていた倉工だけに、久しぶりに存在感をアピールできたのでは。岡山大会で毎年私が注目しているのが、県北勢の動向。毎年毎大会岡山市勢が上位を独占しているので、いつも「頑張れ」と県北勢を応援しています。今夏の大会は、『県北の雄』津山工業が久しぶりに快進撃をみせてくれました。準決勝で倉敷に敗れたものの、2回戦でシード校・倉敷商業破る金星を挙げてのベスト4。いつの日か、県北から甲子園に出場できることを願っています。頑張れ、県北勢! ■広島県 選抜優勝の広陵高校が、他校を寄せ付けぬ圧倒的強さで優勝。予想通りの結果とはいえ、強すぎます。監督さんも選手たちも広島大会を制するのではなく、夏の甲子園でも優勝して春夏連覇するのを目標としているようなので、「広島大会は通過点にすぎない」というモチベーションの高さを痛感しました。全国でも屈指のエースを擁し、打線は強力。試合運びもうまい。死角はないように思える広陵の唯一の不安要素は、エースと二番手との力の差がありすぎることだけ。投手の疲労が蓄積される夏の大会だけに、二番手投手の頑張りがないと、春夏連覇という夢を実現することは難しいような気がします。意外なことですが、新チーム結成時点では甲子園に出場することも難しいと酷評されたチームが選抜で優勝し、夏の甲子園をも制覇しようと目論んでいるのですから、高校生の成長は計り知れないものですね。春夏連覇という野望を達成できるかどうか、大いに注目です。 |
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データで振り返る中四国地区夏季大会−2003.08.04 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
中四国地区の各県夏季大会成績を、「回戦別平均スコア」と「コールド試合率・延長試合率」という観点から以下のようなデータ表を作成してみました。私の冗長なコメントは記述しておりませんので、各人で分析してみて下さい。仔細にみると、各県の特徴が浮き彫りになっているような気がします。 ■回戦別平均スコア表■
■コールド試合・延長試合率表■
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